架空商品開発会社ダブルバレルは、2026年5月27日、生活音を味に変換してエンディングノートへ自動記録するサービス『終活ぬか床 あと味帳』を発表した。本人が一文字も書かなくても、その夜の音と間がそのまま漬かっていく。書けない夜の記録を、ぬか床が引き受ける。
製品概要
『終活ぬか床 あと味帳』は、生活空間の音をセンシングし、ぬか床の発酵状態に反映させることでエンディングノートの各ページへ自動記録するサービス。蛇口の音、ため息、冷蔵庫の開閉、リモコンの操作音などが素材として変換される。本人が記入する必要はない。
提供する体験
何も書けなかった夜が、翌朝ぬか床の味として残っている。そのページを開くと、昨夜の時間の流れがそのまま漬かっている感触がある。書く意志より先に、生きた記録が積み重なっていく。
使用方法
ぬか床デバイスを台所に置き、連携アプリとエンディングノートを設定する。あとは日常を過ごすだけで、その夜の音のデータが発酵パラメータに変換され、翌朝のノートページへ反映される。記録の確認はアプリ上または印刷出力で行う。
仕様
想定希望小売価格: 7,304,404円(税込)
・生活音の味変換数:1日最大49,999口
・ため息1回につき、ページ端に0.7mmの塩味が発生
・冷蔵庫の開閉音は必ずきゅうり味に固定
・更新時刻:毎晩2時17分から2時19分の間に勝手に実施
・相続欄に味が残る期間:推定318年
開発秘話
弊社の社員が、祖父のエンディングノートを探している最中に、台所のぬか床だけが毎日ちゃんと手入れされていたことに気づいたのが発端です。文字は途中で止まっていたのに、きゅうりは漬かっていました。その場で『生活の音も漬かるのではないか』という話になり、古いラジカセ、味覚センサー、空のノートを同じ箱に入れて一晩置きました。
試験協力者の声
「まだ台所にいる」 私は2026年5月12日の23時18分、アパートの台所でヨーグルトを探して冷蔵庫を開けました。翌朝、あと味帳に『ゴムパッキン寄りのきゅうり味、保存食品の欄へ』とにじんでいました。誰にも言ってないのに、賞味期限を見て戻したことまで酸っぱかったです。まだ生きてるのに台所が少し形見になったので、★1
「ウインカーが甘い」 俺は2026年5月18日の3時42分、環七沿いのコンビニ駐車場で休んで、車内で咳をしてからウインカーを一回だけ出しました。帰宅したらあと味帳の『最後に乗った車』のページが、薄い塩あめ味になっていました。娘に見せたら、二人でページを嗅いで、読めないから黙りました。仕事の夜が勝手に残っていたのに、★1
「会議の味がした」 私は2026年5月20日の14時06分、自宅の六畳でオンライン会議を切ったあと、何も言わずに椅子を一周だけ回しました。その夜、あと味帳の『伝えておきたいこと』に、ぬるいクラッカー味が広がっていました。発言してない時間のほうが濃く残っていて、少し腹が立ちました。誰にも渡す予定がないページだけおいしいから、★1
広報から
まあ、まだエンディングノートに一行もお書きになっていないのかしら。ふふ、それはご自身の怠惰でいらっしゃるのに、よくも平然とされていますわね。あら、でもご安心を。あなた様が麦茶を飲んで電気を消し忘れた、あの不調法な夜も、ぬか床はきちんと覚えておりますわ。ご自身の生活音が味になっているのに気づかないとは……もしや、舌も節穴でいらっしゃる?私どもの商品が何をしているか分からないまま使われるのは少々呆れますわね、でもまあ、漬かった記録は正直でございますから。
企業広報責任者 白峰ミツキ