ダブルバレルは、人類の直立歩行・言語・道具使用を段階的に一時忘却させる装置「人類いったん床」を発表した。退化の深度は3,600,000,000,000段階で調整可能で、玄関先での使用を想定したコンパクト設計となっている。
製品概要
「人類いったん床」は、赤いボタン一押しで直立歩行・言語・道具使用のいずれかをわずかに忘却させる装置だ。退化の深度は3,600,000,000,000段階あり、「立てなくなる」から「立つことへの関心がほんの少し薄れる」まで、連続的に調整できる。
提供する体験
靴べらが見つからない朝のように、文明の細部に小さな敵意を感じた瞬間に使う。押した後は、靴を履く必然性が自然とぼやけ、玄関マットの上で四つんばいになることへの抵抗感が消える。怒りではなく、脱力と解放に近い感覚が残る。
使用方法
赤いボタンを一回押す。押す前に、忘却の対象(直立歩行・言語・道具使用)と深度を設定できる。効果の持続時間と回復のペースは個体差がある。
仕様
想定希望小売価格: 86,400,000円(税込)
・退化目盛り:3,600,000,000,000段階(ここだけ異常)
・押しボタン直径:7cm(ベタな赤色)
・復帰の合図:台所タイマーと同じ音で1回鳴る
・同梱ラベル:「たつ」「いう」「つかう」各1枚
・説明書:全12ページ中、9ページが『むりに立たない』
開発秘話
開発のきっかけは、弊社の社員がコンビニのレジ横で袋を1枚だけ取れず、指を濡らす紙も見つからず、最終的に袋の束へ小声で謝ったことです。その帰り道に「道具使用は少し早かったかもしれない」と言い出し、翌朝、赤いボタンだけ先に発注しました。会議では全員がうなずきましたが、誰も議事録を取れませんでした。
試験協力者の声
「箸が急に遠かった」 私は2026年5月26日12時18分、会社の給湯室でカップ麺のフタを押さえる小皿を探しているうちに、なんとなく押しました。すぐ箸の持ち方が遠くなり、床に座って『うー』と言いながら麺を見ました。後輩が黙ってフォークを置いてくれたけど、それも道具だと気づけませんでした。仕事の午後が少しだけきれいに消えたのに、★1
「領収書が箱になった」 俺は2026年5月26日午前3時40分、駅前ロータリーで車を停めて缶コーヒーを飲んでいました。眠いので押したら、まず『おつり』という言葉が口の中でほどけました。次に領収書の機械が、ただの四角い箱に見えました。ハンドルにも敬語で接してしまい、車内で小さく会釈しました。休憩としては成立したのに、仕事には戻りにくいから、★1
「包丁を石と呼んだ」 私は2026年5月26日19時06分、シェアハウスの台所で玉ねぎを切る前に押しました。まな板の前で急に直立がよそよそしくなり、しゃがんだまま包丁を『平たい石』と呼びました。友だちが笑わずに玉ねぎを冷蔵庫へ戻してくれて、私は床からそれを見送りました。晩ごはんは遅れたけど、台所がやたら広く感じたのに、★1
広報から
まあ、ご存知なかったのかしら。文明というものは、お好みの濃度で召し上がるものですのよ。それを今日まで一段階しか選べないと思っていらしたなんて……ふふ、なんとも不調法でいらっしゃる。あなた様がボタンの前で戸惑っていらっしゃるその顔、3,600,000,000,000通りの退化のうち、どれにも辿り着けない節穴ぶりを物語っていますわね。呆れますわ、本当に。玄関マットの上で四つんばいになることの上品さに、まだお気づきでないのかしら?
企業広報責任者 白峰ミツキ