ダブルバレルは、架空商品「若さの居留守」を発表する。年齢への気遣いを受けた瞬間、本人の内面を周囲へ自動公開する身辺装具として設計された。
製品概要
若さの居留守は、年齢を理由とした気遣いを受けた瞬間に自動で起動する胸ポケット型の身辺装具。本人の否認と焦りを周囲へ宣言し、続けて反撃動作を本人へ実行させる。本人が動作を選ぶことはできない。
提供する体験
気遣いを受けた側が感じる傷つきと安堵の両方を、隠さずに場へ出す体験を提供する。古い流行語と謎の腰振りによって場が凍る瞬間が、この商品の中心にある。
使用方法
本体を胸ポケットへ装着しておく。年齢への気遣い発言を検知すると自動で起動し、宣言と反撃動作が順に実行される。使用者は起動後の動作を止められない。
仕様
想定希望小売価格: 41,890,000円(税込)
・年齢配慮フレーズ検知数 12044語、うち3711語は被害妄想由来
・自動若者ぶり音声 1回あたり最長8分46秒、停止ボタンは老眼にだけ読めない薄灰色
・膝関節効果音 最大119dB、本人の膝が鳴っていなくても再生
・誤発動率63%、席を譲られていないのに譲られたことにする補正あり
・SNS下書き生成数 1気遣いにつき47件、全て語尾が微妙に古い
開発秘話
弊社の社員が昼休みに若手から「紙の資料のほうが見やすいですか」と聞かれ、親切だと分かっているのに一日中その言葉だけを反芻したことが発端です。本人はその夜、スマートフォンの文字サイズを戻しながら、誰にも頼まれていないのに流行の略語を検索していました。その情けない往復運動を機械化すれば、中年の尊厳は守られず、むしろ商品になると判断しました。
試験協力者の声
「傷口を音声案内される」 新人に「重いので持ちます」と言われた瞬間、胸元の本体が光って「まだ若手のつもりでやってます」と自動音声を流しました。結果、周囲が本当に荷物を持たせてくれなくなり、逆に私だけ段ボールを三箱運ぶことに。腹は立つが、年齢への小さい怒りが可視化される点だけは妙に正確です。
「気遣いを全部事件にする」 姪に「そのアプリ、設定しましょうか」と言われただけで発動し、私の口調を勝手に若者風へ変換して「それな、設定よろ」と読み上げました。姪は笑うでもなく、ただ丁寧に距離を取りました。低評価ですが、親切を受け取れない自分の小ささをここまで派手にしてくれる商品は少ないと思います。
「まだ中年ではないのに巻き込まれた」 職場で上司に貸したところ、私が「休憩しますか」と言うたびに反応し、上司が謎のステップを踏みながら昔の深夜番組の話を始めるようになりました。本人は怒っているのに、なぜか毎回装着しています。欠陥品ですが、気遣う側の罪悪感まで増幅するので、職場の空気を悪くする性能は高いです。
広報から
この商品は、職場や飲み会における年齢差の気まずさを素材にしている。ただし、その気まずさを解消したり和らげたりするものではない。気遣いを受けた側が何を感じているかを、本人の意思と無関係に場へ提示するという構造を、そのまま商品の形にした。笑いと気まずさが同時に起きる場面に関心がある人に向けて、この商品を提示する。
企業広報責任者 白峰ミツキ