ダブルバレルは、装着者の視覚と聴覚にのみ群衆の歓声とフラッシュを届ける端末、架空熱狂受像機を発表する。外部には何も出力されない構造により、装着者と周囲の間に完全な情報の非対称が生まれる。
製品概要
架空熱狂受像機は、網膜投影と骨伝導を組み合わせた装着型端末で、使用者の視野と聴覚にのみ架空の群衆反応を出力する。周囲の環境には一切の信号を送らないため、外部から観測できる変化は装着者の表情と動作のみとなる。
提供する体験
装着者は歓声、フラッシュ、視線の集中という感覚を受け取りながら、深夜のコンビニや自宅周辺のゴミ置き場を歩くことができる。一方、その場にいる他者には何も起きていない。この内外の断絶が、商品が生み出す唯一の体験だ。
使用方法
端末を装着し、任意のシーンモードを選択して起動する。効果は即時に始まり、装着者の日常動作と歓声の出力が同期して続く。電源を切るまで、外側からは何も変わっていない。
仕様
想定希望小売価格: 8,900,000円(税込)
・登録済み架空ファン顔データ1,000万人分(全てAIによる微妙な表情違い)
・骨伝導歓声音量最大140デシベル(鼓膜保護機能なし)
・本体重量7.5kg(首の筋力トレーニング必須)
・連続稼働時間12分(フル充電に48時間)
開発秘話
弊社の社員が、渾身のSNS投稿に「いいね」が2件しかつかなかった日に、悔しさから柄の悪いサングラスをかけて街を歩き、「すれ違う人全員が自分を見ている」と必死に自己暗示をかけたものの、結果として誰一人とも目が合わなかったというみみっちい実体験から着想を得て開発されました。
試験協力者の声
「歓声が大きすぎて事故に遭いかけた」 近所のスーパーに行く途中、熱狂的なファン(幻覚)に囲まれてサインを求められているうちに、後ろから来た車のクラクションが全く聞こえず轢かれそうになりました。フラッシュの網膜投影も眩しすぎて足元の段差が見えません。スターの孤独を味わえました。
「スキャンダルモードが精神を削る」 ランダムでパパラッチからスキャンダルを追及されるモードが発動します。ただ燃えるゴミを出しているだけなのに、無数のフラッシュを浴びながら「一言お願いします!」と架空の記者に追い回され、精神的な疲労で会社を休みました。理不尽すぎます。
「現実に戻った時の落差で寝込みました」 バッテリーが12分しかもたないため、駅に向かう途中で突然数千人のファンが消滅します。その瞬間、静まり返った住宅街と誰からも注目されていない現実がのしかかってきて、虚無感でその場から動けなくなりました。
広報から
この商品を紹介するとき、機能の説明より先に外側からの絵を見せることにしている。何もない空間に向かって手を振る人、突然まぶしそうに目を細める人、その場面を見た瞬間の反応が、商品の本質を正確に伝えるからだ。日常の隙間にある小さな自尊心の問題を、笑いの形に変換できる人に届けたい商品だと考えている。機能や効果の話は後でいい。
企業広報責任者 白峰ミツキ