ダブルバレルは、架空商品「七分咲き走馬灯」の発表を行う。人生の体感速度を1.75倍に引き上げながら、記憶の記録密度を等倍に据え置く首掛け式の設計が特徴となっている。
製品概要
七分咲き走馬灯は、首掛け式のタイパ信仰具として設計された架空装置である。人生の体感速度を1.75倍に引き上げる機能を持ちながら、思い出の記録密度は等倍速のまま変化しない。この非対称な設計により、短縮された時間のぶんだけ記憶の説明欄が空白になる。
提供する体験
装着中、会議・通勤・家族旅行・誕生日といった出来事の体感が1.75倍速で進む。帰宅後には「早く終わった」という満足感が残るが、その場で何が話されたか、誰の話だったかは通常よりも薄い状態で記録される。稼いだ時間と引き換えに、人生の内容が少しずつ薄くなっていく体験を提供する。
使用方法
首に掛けて装着する。実家への訪問、職場の会議、行きたくない席など、体感を短縮したい場面で使用する想定となっている。装着中の行動に制限はないが、終了後に記憶の密度が通常より低下していることに装着者自身が気づく設計になっている。
仕様
想定希望小売価格: 17,517,517円(税込)
・体感速度倍率:1.75倍固定、微調整つまみはあるが内部で無視
・思い出保存レート:現実時間1分につき34.285秒分だけ記録
・空白の懐かしさ生成量:1日あたり最大6.4時間分
・付属の専用お経:毎分210拍、途中で聞き取れなくなる設計
・保証期間:装着者が『なんかもう夕方?』と言うまで
開発秘話
弊社の社員が動画教材を1.75倍速で見たあと、見終わった事実だけを自慢し、内容を一つも説明できなかったことが発端です。その社員は『見たという実績は等倍より早く手に入った』と主張しましたが、昼食に何を食べたかも忘れていました。そこで、理解や充実ではなく、終わった感じだけを先に配る道具として試作されました。
試験協力者の声
「飲み会が一瞬で終わったのに損した気分」 会社の飲み会で使いました。上司の同じ話が高速で流れて体感はかなり短くなったのですが、翌朝『昨日は盛り上がったな』と言われても何で笑ったのか全然わかりません。時間を守った代わりに人間関係の証拠を紛失した感じです。ただ、嫌だったことも薄いので★1です。
「旅行に持っていくものではない」 温泉旅行で使ったら移動も食事も入浴もすぐ終わり、非常に効率的でした。写真はたくさん残っていますが、自分がそこにいた実感だけが安物の紙みたいに薄いです。旅館の朝食を食べた形跡はあるのに味を覚えていません。忙しい人間の末路を先に見せられる商品です。
「講義には向いているが人生には向いていない」 退屈な講義がすぐ終わるので最初は便利だと思いました。でもノートを見ると自分の字で重要そうなことが書いてあるのに、書いた記憶が薄くて他人の遺品みたいです。試験前に見返すと、過去の自分が高速で逃げた後始末だけ残っています。怠惰の手触りが明確になるので低評価です。
広報から
この商品は、時短の達成感と記憶の空白が同時に発生する構造を持っている。便利さを前面に出すと商品の核が消えるため、広報としては「何が起きるか」を先に見せる方針を取った。想定読者は、自分のタイパ志向に少し心当たりのある人で、笑えるかどうかは読んだ本人に委ねている。説明で丸めず、異常さをそのまま提示することが、この商品の正しい見せ方だと判断した。
企業広報責任者 白峰ミツキ