ダブルバレルは、架空商品「カメムシ結界ブローチ TYPE-6B」の発表を行う。他者との距離という日常的な問題に、嗅覚と指向性というアプローチで応答した一品だ。
製品概要
「カメムシ結界ブローチ TYPE-6B」は、着用者から半径45センチの範囲に他者が侵入した際、架空のカメムシ由来悪臭成分をマッハ5の指向性で展開するウェアラブル架空デバイスだ。悪臭は対象者の鼻腔付近に集中して到達し、着用者本人の嗅覚領域には一切干渉しない非対称設計を採用している。
提供する体験
着用者は、他者が近づいた瞬間に何も言わず、何もせず、ただそこに立っていられる。相手だけが突然の嗅覚情報を受け取り、空間の意味が静かに変わる。言葉や表情を使わないやり取りとして機能する。
使用方法
ブローチを衣服に取り付け、着用するだけでよい。半径45センチのセンサー領域は自動で起動し、侵入を検知した時点で悪臭展開が始まる。使用者側の操作は不要だ。
仕様
想定希望小売価格: 720,000円(税込)
・カメムシ6億匹分の悪臭成分を1滴に凝縮
・指向性悪臭噴射速度: マッハ5
・相手の嗅覚占有率: 4000%
開発秘話
弊社の企画担当が、満員電車でどうしても隣に座られたくないあまり、自分の服にファブリーズの代わりにパクチーの汁を塗りたくって出勤したところ、誰も近づいてこなかったが自分も一日中吐き気を催したというしょうもない経験から発明されました。本人だけは快適なまま、他人だけを圧倒的な悪臭で撃退する技術の開発に成功しました。
試験協力者の声
「座れたからいいけど」 電車で絶対に隣に座られたくなくて、このブローチを買いました。作動させると、近づいてきた人が一瞬で顔をゆがめて別の車両に逃げていくので、パーソナルスペースは完璧に守られています。ただ、あまりにも周りの人が激しくえずきながら去っていくので、私がすごい体臭の人だと思われてるんじゃないかと不安になってきました。本人は無臭なので確認のしようがないんですが、今日も目の前でサラリーマンが涙目で引き返していきました。まあ、座れたからいいんですけど。★1。
「静かな誕生日」 職場で部下に「ちょっといいですか」と話しかけられるのが面倒で導入しました。設定距離を1メートルにしたら、私のデスクに近づいた人間全員が「ウッ」と声を漏らしてUターンしていきます。おかげで雑談も相談も一切なくなり、業務効率は劇的に上がりました。ただ、誰からも話しかけられないので、今日が私の誕生日だということも誰にも触れられず、定時を迎えました。静かでいい誕生日でした。はい。それだけです。★1。
「私も帰ることに」 カフェで仕事中、隣の席に人が来るのが嫌で使ってます。カメムシ6億匹分の匂いをマッハ5で相手の鼻にだけ撃ち込むらしいんですが、私には何も匂わないので本当に効いてるのか最初は疑ってました。でも、隣に座ろうとしたカップルが「なんかこの店、下水管破裂してない?」と言い残して店を出て行ったので、効果は絶大みたいです。ただ、そのあと店長が深刻な顔で配管業者を呼んでしまい、店全体が臨時休業になりました。私も帰るしかなくなりました。★1。
広報から
このブローチは、パーソナルスペースの問題を笑いと本気の中間で扱っている。電車の隣席、職場での不意な接近、そういう場面で言葉を使わずに何かを伝えたいという感覚は、多くの人が持っている。商品の異常さはそのまま残してある。見た人が「欲しいかどうか」より先に「これは何だ」と思う順番を大切にした。想定読者は、日常の不快を笑いに変える余裕のある人、あるいは本当に困っている人の両方だ。
企業広報責任者 白峰ミツキ