ダブルバレルは2026年6月10日、卓上型氷角研磨装置『カド研ぎ』を発表した。グラスに氷を入れると、装置のヘッドが自動で氷の角を検知し、溶けるまでの間、各面の稜線を連続して研磨し続ける。氷が完全に溶けると装置は7秒間停止し、その後スタンバイ状態に戻る。冷却機能・製氷機能は持たない。氷の角を磨くことが、この装置の全機能である。
製品概要
カド研ぎは、グラス内の氷に含まれる稜線を自動検知し、溶けて消えるまでの間、角を丸く研磨し続ける卓上装置である。氷が完璧な曲面に近づくほど、その氷は融解の末期にある。装置は氷の消滅をもって一サイクルの完了と判定し、7秒間の停止ののちスタンバイに戻る。
提供する体験
バーテンダーの久保田は、カウンターに置いた初日から仕事にならなくなった。客にウイスキーを出して、話しかけられながら、ずっとヘッドの動きを目で追っていた。角が一個丸くなるたびに小さく声が出た。客が帰った後、グラスの氷はもうなかったが、ヘッドはまだ何かを探していた。それを見て、俺も少し探した。次の日も、その次の日も、客の声より角の状態が気になった。気づけば、話を最後まで聞かない男になっていた。
使用方法
グラスに氷を入れ、カド研ぎの研磨ヘッド部分をグラスの口に合わせてセットすると、自動で起動する。ヘッドは氷の稜線を検知した順に磨き始めるため、複数の角が同時に処理されることはない。氷が溶けてグラス内に検知対象がなくなると、装置は7秒間停止する——これを本体は「完了」として処理する。7秒の経過後、装置は次の氷を待つスタンバイ状態に戻るが、グラスが空のままヘッドが微細振動を続ける場合がある。これは正常な動作である。
仕様
想定希望小売価格: 286,000円(税込)
・研磨精度0.02mm。だが氷は3分で形が変わるので意味はない
・1個の氷につき平均4.7回、角を磨き直す
・研磨ヘッドは年間1300時間、空気を磨いている(氷が無いとき)
・稼働音は34デシベル。寝室に置いた人の睡眠を妨げないことだけは保証されている
・氷が溶けきると7秒間、機械が静止する。これを開発者は『黙祷』と呼んでいる
開発秘話
社員が居酒屋で、溶けかけの氷の角を爪楊枝でつついて丸くしているのを別の社員に見られ、『何してんの』と聞かれて『いや、角が気になって』としか言えなかった。その沈黙が忘れられず、爪楊枝の代わりに機械にやらせたら、誰も止められなくなった。
試験協力者の声
「客より氷を見てた」 店のカウンターに置いてみた。ウイスキーを出して、客と話している間、俺はずっと機械が氷の角を磨くのを見ていた。客が何か言っていたが、角が一個丸くなった瞬間に小さく『お』と言ってしまった。客が帰った後も磨いていた。氷はもうなかった。それでもヘッドは空のグラスの中で何かを探していた。仕事にならないので、★1。
「完璧になったら消えた」 氷の角が一つずつ丸くなっていくのを見ているのが好きで買った。全部の角が完璧な曲線になった瞬間、その氷はもう半分溶けていて、5分後には水になっていた。一番綺麗な状態を、機械が一番頑張って消していた。誰も悪くない。私は新しい氷を入れて、また最初から見た。気づいたら深夜2時。何も生み出していないのに、★1。
「黙祷が長い」 氷が溶けきると機械が7秒止まる。これを黙祷と呼ぶらしい。最初はふざけてると思った。だが何度も見ているうちに、その7秒が来ると俺も自然と動きを止めるようになった。妻に『何やってんの』と聞かれたが、説明できなかった。氷の角に黙祷してます、とは言えない。家族の前で使えないから、★1。
広報から
あら、グラスの氷をただ溶かしていらっしゃったの。それはもったいないことでしたわね。角というものは、丁寧に磨かれてこそ意味をなすもの——もしや、そのことにお気づきでなかった……?ふふ、お客様のような方のために、私どもはこの機械をご用意申し上げましたのよ。氷が消えた後もヘッドが空のグラスを探しておりますのに、それでも何も感じられないとしたら、いったい何をご覧になって生きていらっしゃるのかしら?
企業広報責任者 白峰ミツキ